シングルマザーとして子どもを育てることは、経済的にも精神的にも大きな負担がかかります。「シングルマザーは大変」「将来が不安」という声も多く、悲観的な末路ばかりが語られがちです。しかし、本当にシングルマザーの未来は暗いものだけなのでしょうか?
現状を見ると、ひとり親世帯の子どもの約2人に1人が貧困状態にあるなど、厳しい課題が存在します。一方で、適切な支援策を活用し周囲の助けを得ることで、こうした困難を乗り越えて幸せを掴んでいる人も少なくありません。
本記事では、シングルマザーが陥りがちな悲しい末路とその原因を整理し、生活が「きつい」と感じたときに取るべき具体的な行動、そしてシングルマザーが希望を持って幸せになるためのポイントについて解説します。困難な現状を正しく知り、適切な対策を講じることで、シングルマザーでも明るい未来を描くことは可能です。
シングルマザーが陥りやすい悲しい末路
シングルマザーの多くが直面しやすい困難には共通するパターンがあります。ここでは、シングルマザーが陥りがちな3つの悲しい末路について、その原因と背景を交えながら説明します。
その1: 経済的困窮と高い貧困リスクに陥ること
2022年の厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、ひとり親世帯の貧困率は44.5%に達し、ひとり親家庭で育つ子どもの約2人に1人が貧困状態にありこれは日本のひとり親世婦体の貧困率が、OECD加盟国の中でもワースト5位という深刻な水準であり、シングルマザー家庭が経済的に非常に厳しい状況に置かれやすいことを示しています。
シングルマザーの経済的困窮の背景には、収入の低さがあります。男女共同参画白書(令和5年版)の調査によれば、シングルマザーの就業率は86.3%と非常に高いにもかかわらず、その平均就労収入は約236万円と、シングルファーザー(約496万円)の半分以下しでかありません。
多くの母子家庭の母親が非正規雇用(パート・アルバイト等)で働いていることや賃金格差により、フルタイムで働いても生活を安定させるだけの収入を得にくい現状があります。実際、母子家庭の母親の雇用形態を見ると正社員は約半数にとどまり、残りは派遣やパートなど非正規が4割近くを占めています。
このため、「働いても苦しい」ワーキングプア状態に陥りやすいのです。さらに、離別した父親からの養育費が受け取れていないケースも多く、厚労省の調査では養育費の取り決め自体をしていない母子世帯が半数以上、現在進行形で養育費を受け取っている世帯はわずか28.1%に過ぎないことが分かっています。本来受け取れるはずのお金が途絶えていることも、シングルマザーの家計を圧迫し貧困に拍車をかける一因となっています。
その2: 過重なストレスで心身の不調を招きやすいこと
シングルマザーは仕事・育児・家事のすべてを一人で背負うため、極度のストレスや疲労に陥りがちです。その結果、精神的な不調や体調悪化に悩まされるケースも少なくありません。
国立成育医療研究センターの調査によれば、5歳以下の子を持つ母親のうち「同居家族のいないシングルマザー」では、中程度以上の精神的不調を抱える割合が他の家庭形態に比べ突出して高く、中~重度のメンタル不調を訴える母親が顕著に多いことが報告されています。
具体的には、両親のいる家庭や祖父母と同居している家庭では7割以上の母親が「精神的に問題なし」と自己評価する中、単独で子育てするシングルマザーではその割合が59%にとどまり、4割超の母親が何らかの精神的な不調を抱えていました。
追い詰められたシングルマザーの中にはストレス発散のために喫煙や飲酒の習慣が増えてしまう人も多く、例えば毎日喫煙する人の割合は両親家庭の数倍にも上っています。

孤独と過重なストレスからうつ状態や健康悪化を招き、「疲れ切ったシングルマザー」となってしまう悲しい末路も現実に起こり得るのです。
こうした精神的な不調に陥るか否かの分かれ目として、周囲のサポートの有無が非常に重要です。シングルマザー当事者への調査では、約8割がシングルマザーになってから何らかのメンタル不調を経験したと回答していますが、逆に「不調にならなかった」人たちの多くは「家族のサポートがあったため」「友人・知人の支えがあったため」と回答しています。
周囲に悩みを相談できる人がいるか、一人で抱え込まない環境を持てるかどうかで、シングルマザーの精神的安定は大きく左右されます。裏を返せば、家族や友人の支えが得られず孤立してしまうと、心の負担が限界を超えてしまい、うつ病や体調不良に陥ってしまうリスクが高まるということです。「孤独で頑張りすぎて心身を壊す」という悲劇も起こりやすく、これもシングルマザーが陥りやすい末路の一つと言えるでしょう。
その3: 子どもの教育格差・将来への悪影響が及ぶこと
シングルマザー自身の問題だけでなく、子どもの将来に影響が及んでしまうケースも深刻です。経済的困窮や親の長時間労働の影響で、子どもが十分な教育や経験の機会を得られず、将来的な格差につながってしまうおそれがあります。
実際、経済的理由による子どもの教育格差・体験格差の拡大が近年問題となっており、ひとり親家庭の子どもの大学進学率や習い事・部活動への参加率は、全世帯平均と比べて低い傾向がデータでも示されています。親の収入不足のために進学や習い事を諦めざるを得なかったり、塾や家庭教師を利用できず学力に差がついてしまったりといったケースが生じやすいのです。
その結果、子どもが十分な教育を受けられず将来の職業選択や収入面で不利を抱え、貧困の連鎖につながってしまう可能性が指摘されています。
さらに、前述のような母親の極度のストレスやメンタル不調は、子どもの心身にも悪影響を与えかねません。母親が精神的に追い詰められていたり、家計が不安定で生活がぎりぎりだったりする家庭環境では、子どもも情緒不安定になったり自己肯定感を育みにくくなったりするとの指摘もあります。
また、シングルマザーが忙しすぎるあまり子どもと向き合う時間が減ってしまうと、子どもの学業や生活習慣に目が行き届かず問題行動に発展するリスクも否定できません。
つまり、シングルマザーが抱える経済的・精神的な困難は、そのまま子どもの成長や将来の可能性を狭めてしまうという悲しい連鎖を生む恐れがあるのです。このように「子どもに辛い思いをさせてしまうのでは」という不安も、シングルマザーが背負いがちな悲哀の一つと言えます。
生活がきついと思ったらすべきこと
以上のようにシングルマザーを取り巻く状況は厳しいものがありますが、「生活がきつい」「もう限界かも」と感じたときには、ぜひ冷静に状況を打開するための行動を起こしてみてください。ただ我慢するだけでは状況は好転しません。
日本では行政や地域社会による様々な支援制度が用意されており、適切に活用すれば生活の苦しさを緩和することができます。ここでは、シングルマザーが生活苦に陥ったときに取るべき3つの具体的アクションを紹介します。辛い状況から抜け出す一歩として、ぜひ検討してみてください。
その1: 養育費の確保と利用できる公的支援の活用
まず最優先に取り組みたいのは、利用できるお金を最大限確保することです。特に離婚や別離によってシングルマザーになった方は、子どもの父親から受け取るべき養育費を確実に受け取れているか見直してみましょう。
前述の通り、実に7割以上の母子家庭で養育費が受け取れていない現状があります。養育費は子どもの権利でもありますので、もし取り決めがまだなら家庭裁判所や自治体の相談窓口に相談し、法的に取り決めることを検討してください。すでに取り決めがあるのに支払われていない場合も、各自治体には養育費確保支援の仕組みが用意されています。
たとえば養育費の不払いに悩むひとり親のために、公正証書作成費用の補助や、弁護士による相談支援を行っている自治体もあります。泣き寝入りせず、まずは養育費をきちんと受け取る努力をしましょう。
次に、公的機関から受け取れる手当や給付金を漏れなく活用することが重要です。シングルマザーが利用できる代表的な支援策としては、以下のようなものがあります。
- 児童手当(0~中学校修了までの子に支給される手当。ひとり親以外も対象)
- 児童扶養手当(ひとり親家庭向けの手当で、所得に応じて月最大4万円以上支給
- 児童育成手当(自治体独自の支援策。東京都などで支給)
- 特別児童扶養手当(障害のある子を育てる家庭への手当)
- ひとり親家庭の住宅手当(家賃補助。一部自治体で実施)
- ひとり親家庭等医療費助成制度(通称「マル親」。ひとり親家庭の医療費自己負担を軽減)
- ひとり親自立支援給付金(資格取得や就業支援のための給付金)
- 生活保護(生活が立ち行かない場合の最後のセーフティネット)
- 遺族年金(配偶者と死別した場合に受給できる年金)
これら以外にも、自治体によっては税金や公共料金の減免、保育料の減額、交通機関の割引など様々な支援策が用意されています。支援制度は多岐にわたりますが、「知らなかったために利用していなかった」では大変もったいないことです。
まずはお住まいの市区町村役場のひとり親家庭相談窓口に問い合わせて、自分が受け取れる手当や利用できる支援制度をすべて確認しましょう。
その2: 就業支援を活用し収入アップを目指す
長期的に生活を安定させるには、収入を増やす工夫も避けて通れません。先述した通り、シングルマザーの平均収入が低い一因は非正規雇用の割合が高いことにあります。パートやアルバイトだと年収150万円程度にとどまり、子どもと暮らしていくには不十分になりがちです。
そこで、可能であれば正社員への転換やスキルアップによる転職・昇進を視野に入れましょう。とはいえ「子育てしながら勉強や長時間勤務なんて無理」と思うかもしれません。しかし安心してください。ひとり親の就労を支援する制度も数多く整っています。
例えば、各地のハローワークにはマザーズコーナーと呼ばれる子育て中の母親向け就職相談窓口があり、保育所情報の提供や面接日時の配慮など、子育て世帯に理解のある求人探しをサポートしてくれます。自治体によっては「ひとり親家庭就業・自立支援センター」が設置され、キャリアカウンセリングや職業訓練の斡旋を行っています。
特に、資格取得によるキャリアアップは有効で、看護師や介護福祉士、保育士などの国家資格取得を目指すひとり親に対しては高等職業訓練促進給付金などの制度で在学中の生活費を支援しています。実際、国や自治体はひとり親の自立に向けて「就業支援」「経済的支援」「子育て・生活支援」「養育費確保支援」の4本柱で総合的な策を講じています。
その3: 周囲に相談し一人で抱え込まない(支援ネットワークの活用)
生活が辛いと感じたとき、決して一人で抱え込まないことが大切です。経済的な問題にせよ育児や生活上の悩みにせよ、誰かに相談することで解決策が見えてくる場合は少なくありません。身近に相談できる家族や友人がいれば遠慮なく頼りましょう。
「迷惑をかけたくない」と思うかもしれませんが、あなたが思っている以上に周囲は力になりたいと思ってくれているものです。それに、少し助けてもらうことであなたが笑顔を取り戻せれば、結果的にお子さんにとってもプラスになります。
公的な相談窓口も各地にありますので、頼れる身内が周りにいない場合でも心配はいりません。市区町村のひとり親相談、社会福祉協議会の生活相談、民間の無料ホットラインなど、気軽に話を聞いてくれるプロは存在します。
ひとり親家庭支援団体(NPO)でも、電話やメールで悩み相談を受け付けているところがあります。例えば、認定NPO法人のキッズドアでは困窮家庭の保護者からの相談を常時受け付けており、食料支援や学習支援につなげている実績があります。一人で思いつめず、「助けて」と声を上げることは決して甘えではなく、より良い生活への積極的な一歩です。
また、同じ境遇のシングルマザー同士でつながりを持つことも大きな助けになります。自分と似た立場の人が身近にいるだけで孤独感は和らぎますし、情報交換を通じて有益なアドバイスが得られることもあります。最近では、シングルマザー同士が交流できるコミュニティやSNSグループ、マッチングアプリ(※シングルマザー限定の交流アプリなど)も登場しています。
あるアンケートでは、シングルマザーの約8割が「シングルマザーになって寂しさを感じたことがある」と答えています。孤独を感じるのはあなただけではありません。ぜひ積極的に同じ境遇の仲間を見つけてみてください。先輩シンママの体験談ブログや交流サイトを覗くだけでも、「自分だけじゃないんだ」と前向きな気持ちになれるでしょう。身近に相談できるシングルマザーの友人がいない場合は、思い切って地域のひとり親の集いやオンラインコミュニティに参加してみるのもおすすめです。
幸せになりたい人はどうすればよいのか?
「辛い末路」を避けて生活の安定を図ることも大切ですが、最終的な目標はシングルマザー自身が幸せになることです。では、シングルマザーが幸せを感じるために大切なことは何でしょうか?
いくつかポイントを挙げてみます。
まず 「自分も幸せになっていいのだ」と認めること が大切です。日本では古くから「母親は子どものために自分を犠牲にすべき」という風潮がありました。しかし、あなた自身が不幸せなままでいると、それはお子さんにも伝わってしまいます。東京都のシングルマザー支援サイトのインタビューで、ある先輩ママ(ゆかりさん)は「子供は親を見て育つから、自分が幸せにならないと子供を幸せにできない」と語っています。
まさにその通りで、ママが笑顔で前向きに生きていること自体がお子さんの幸せにつながります。シングルマザーである自分を必要以上に責めたり卑下したりせず、「自分と子どもの未来を良くするために今頑張っているんだ」と肯定的にとらえましょう。
離婚やシングルマザーになる選択は、決して「失敗」ではなく、より良い未来への新しいスタートだという考え方も大切です。実際、離婚を経てシングルマザーになった多くの女性が「結果的にあの決断は正解だった」「前より幸せになれた」と感じているという調査もあります。過去を後悔するより、「これからどう幸せになるか」に目を向けてください。
周囲の支えを遠慮なく受け入れることも、幸せになるための鍵です。孤軍奮闘していると心が疲弊してしまいますが、支援を受け入れることで気持ちにゆとりが生まれます。公的支援しかり、家族や友人の助けしかり、前述のファミリーサポートなど地域の助けしかり、使えるものは使ってください。
「こんなこと頼んでいいのかな?」と気が引けるかもしれませんが、支え合うことは恥ずかしいことではありません。むしろ、あなたが助けを得て元気になれば、お子さんにも明るく接することができ、良い循環が生まれます。社会全体としても、ひとり親家庭を孤立させないための取り組みが進んでいます。
国や自治体の支援に加え、地域コミュニティでシングルマザーを支える動きが広がりつつあり、「誰一人取り残さない社会」を実現しようという目標が掲げられています。あなたが手を差し伸べれば、必ず受け止めてくれる人や制度があります。
そして最後に忘れてはならないのが、お子さんとの絆を大切にすることです。シングルマザーにとって子どもは何よりの宝物であり、生きる力の源でもあります。経済的な豊かさや家庭環境がどうであれ、親子の愛情と信頼関係がしっかりしていれば、子どもは健やかに育ち、将来きっと理解を示してくれるでしょう。苦労をともに乗り越えた経験は、親子の絆を一層強くします。
まとめ:必要な支援に手を伸ばそう
シングルマザーが陥りやすい「悲しい末路」として、経済的困窮による貧困、過重なストレスによる心身の不調、そして子どもの将来への悪影響という3つの課題を見てきました..。たしかに日本のシングルマザーを取り巻く状況は厳しく、統計からも多くの困難が浮き彫りになっています。
しかしながら、同時に、それらの困難を乗り越えるための支援策や知恵も数多く存在します。養育費や公的手当を確実に受け取り、就業支援を活用して収入向上を図り、周囲の助けを借りながら孤立しない工夫をすることで、シングルマザーの生活は大きく改善する可能性があります。
何より、「自分と子どもが幸せになるんだ」という前向きな気持ちを持ち続けることが大切です。シングルマザーの末路は決して悲惨なものと決まっていません.。状況を正しく知り、適切な支援と努力を重ねれば、シングルマザーでも経済的に安定し、心穏やかに子育てを楽しみ、子どもと共に幸せになることは十分に可能です。
あなたは一人ではありません。同じ境遇の仲間や支援者とつながりながら、ぜひ希望を持って未来を切り開いてください。困難を乗り越えた先には、きっと明るい明日が待っていることでしょう。
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