母子家庭の方が得と言われる理由|裕福になる要因と手当の一覧

母子家庭の方が得と言われる理由|裕福になる要因と手当の一覧

世間では「母子家庭の方が得をしている」「シングルマザーは支援で裕福だ」といった声を耳にすることがあります。しかし、本当に母子家庭は経済的に恵まれているのでしょうか?

実際には、母子家庭には様々な支援制度がある一方で、収入が低く生活が厳しい世帯も少なくありません。本記事では、まず母子家庭が「得」と言われる主な理由を解説し、続いて一部の母子家庭が裕福に見える背景要因を考察します。

さらに、母子家庭が利用できる手当や支援策の一覧を紹介し、最後に母子家庭の置かれた現状についてまとめます。偏見を中和し、公平な視点で母子家庭の経済状況を理解する一助となれば幸いです。

目次

母子家庭の方が得と言われる理由

母子家庭が「得をしている」と言われるのには、いくつかの背景があります。ここでは母子家庭の方が一般家庭より経済的に有利だと見られがちな理由を、代表的なものを3つ説明します。

理由1:充実した公的手当で収入が加算されるため

母子家庭には国や自治体から支給される公的手当が複数あります

たとえば、児童扶養手当はひとり親家庭を対象とした代表的な手当で、18歳未満の子ども1人につき月額約4万5千円(所得に応じ一部減額あり)が支給されます。

また、児童手当も全家庭対象の支援策ですが、子ども1人あたり月1万円~1万5千円(第3子以降は月3万円)が支給され、子育て世帯の生活安定を図っています。

これらの手当により、母子家庭では給与以外に毎月数万円程度の収入が加算されるケースがあり、経済的に得をしているように見られる理由の一つです。

理由2:医療費や保育料などの減免措置で支出を抑えられるため

母子家庭には生活上の支出を軽減するための減免制度も整っています

具体例をあげると、自治体によってはひとり親家庭医療費助成制度があり、母子家庭の母や子どもが病院を受診した際の健康保険自己負担分を自治体が助成する仕組みがあります。これにより、子どもの医療費が実質無料になる地域も多く、一般家庭より医療費負担が軽減されます。

また、所得の低いひとり親世帯では保育園の保育料が免除または大幅減額されることが多く、公営住宅の家賃や水道料金の減免措置が受けられる自治体もあります。公的支援によって生活コストが下がるため、「母子家庭はお金がかからず得をしている」と思われる理由になっています。

理由3:税制優遇や養育費により手取り収入が多くなるため

母子家庭には税制上の優遇措置も用意されています。所得税では、ひとり親が該当すればひとり親控除として所得から35万円の控除が受けられます。住民税においても同様の控除があり、収入次第では住民税が非課税になる場合もあります。

この控除によって、同じ収入でも一般家庭より税負担が軽く、手取り額が多く残ります。さらに、離婚した元配偶者から受け取る養育費も税法上は非課税収入であり、全額が生活費に充てられます。

月5万円の養育費を受け取れば、その分まるごと手取り収入が増えるわけです。仮に給与手取り20万円に養育費5万円が加われば、一般のサラリーマンが税引き後25万円を得るのに匹敵し、年収ベースでは360~400万円程度の生活水準になります。

このような税優遇と養育費の存在により、母子家庭は「思ったより懐が潤っている」と見られることがあるのです。

母子家庭が裕福になる要因

上記のような支援策があっても、すべての母子家庭が裕福なわけではありません。しかし、中には周囲から「裕福そうだ」と思われる母子家庭が存在するのも事実です。ここでは、母子家庭が経済的に余裕ある暮らしを実現している主な要因を3つ挙げて解説します。

要因1:別れた配偶者から高額な養育費を受け取っている

離婚した元夫から十分な養育費を受け取っている場合、母子家庭の収入は大きく底上げされます。厚生労働省の全国ひとり親世帯調査によれば、離婚した父親から養育費を現在も受け取っている母子世帯は28.1%に過ぎませんが、その平均月額は約5万円にのぼります。

なかには、月10万円以上の養育費を取り決めるケースもあり、これらはすべて非課税で手元に入るため家計の助けとなります。十分な養育費収入がある母子家庭では、離婚前と変わらない水準の生活を維持できたり、場合によっては離婚前よりも自由に使えるお金が増えることすらあります。

その結果、周囲から「母子家庭なのに裕福だ」と映ることがあるのです。養育費は元配偶者の収入次第ではありますが、高額な養育費を安定して受け取れるかどうかが裕福さを左右する大きな要因となります。

要因2:実家の経済的支援が受けられる

母子家庭の中には、自分の両親から経済的な援助を受けているケースも多く見られます。

厚生労働省の調査によれば、母子世帯の約38.8%は母子以外の同居者がいるとされ、その内訳でもっとも多いのが「親と同居」で全体の半数以上を占めます。つまり全母子家庭の2割前後は実家に身を寄せている計算になり、親と同居すれば家賃や光熱費が実質的にかからなかったり、生活費の援助を受けられる利点があります。

たとえ同居でなくとも、実家から定期的に仕送りを受けていたり、子どもの学費を祖父母が負担しているといった例もあります。実家の経済力がしっかりしている母子家庭では、このようなサポートによって生活にゆとりが生まれやすく、経済的に裕福に見える要因となっています。「母子家庭なのに余裕がありそう」と感じる場合、背後には祖父母からの強力なバックアップが存在していることも少なくありません。

要因3:母親本人が安定した高収入を得ている

母子家庭が裕福に暮らせるかどうかは、ひとえに母親自身の稼ぎにもかかっています。一般にシングルマザーは非正規雇用が多く収入が低い傾向がありますが、一方で約半数は正社員など安定した職に就いているのも事実です。

正社員としてフルタイムで働けば、能力や職種によっては年収500万円以上を得ることも可能でしょう。看護師やIT技術者など専門資格・スキルを持つ母親であれば、市場価値が高いため高収入を実現しやすくなります。

さらに副業や投資に積極的に取り組み資産形成に成功しているシングルマザーもおり、離婚前に夫と築いた資産を財産分与で受け取って悠々自適に暮らす例もあります。

このように母親自身の努力とキャリアによって高い収入を確保できれば、母子家庭であっても経済的に豊かな生活を送ることができます。実際、「母子家庭=貧困」というイメージを覆し裕福さを実現している家庭の多くは、母親が正社員で働いているか、何らかの形で人並み以上の収入を確保しているケースだと考えられます。

母子家庭に認められる手当一覧

母子家庭には上記のような理由・要因から経済的支援が手厚く講じられています。それでは実際に、母子家庭が利用できる主な手当・支援制度にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは代表的な公的手当を一覧にして紹介します。

※支給要件や金額は2025年時点の情報であり、居住地域や所得により異なる場合があります。詳しくはお住まいの自治体窓口等でご確認ください。

制度名 支給対象 支給額(2025年時点) 所得制限 備考
児童扶養手当 18歳到達後最初の3月末までの児童を養育するひとり親 1人:月最大46,690円、第2子以降加算あり あり 国の手当
児童手当 0歳〜中学生まで(2024年10月以降は高校生年代まで予定) 3歳未満:月15,000円
3歳以上〜中学生:第1・2子は月10,000円、第3子以降は月30,000円
所得超過世帯は月5,000円
あり 年6回(偶数月)に2か月分支給
住宅手当(母子家庭等住宅支援給付) 20歳未満の子を扶養し民間賃貸に居住するひとり親 月5,000〜10,000円程度(自治体により異なる) あり 自治体ごとに名称・条件が異なる
ひとり親家庭等医療費助成 ひとり親家庭の親および児童 自己負担分を全額または一部助成 あり 対象年齢・助成内容は自治体による
子ども医療費助成 一定年齢までの児童(ひとり親以外も対象) 通院・入院費の自己負担分を全額または一部助成 自治体による 対象年齢や助成額は地域差あり
特別児童扶養手当 20歳未満で一定の障害がある児童 1級:月52,500円
2級:月34,970円
あり ひとり親かどうかを問わない
障害児福祉手当 重度障害がある20歳未満の児童 月14,480円 あり 年4回に分けて支給、一律額
遺族年金 配偶者死亡による遺族 基礎年金:年780,900円+子加算
厚生年金:約4分の3
あり 離婚は対象外
児童育成手当 18歳までの児童を扶養する母子家庭 月13,500円(東京都特別区例) あり 自治体独自、国の児童扶養手当に上乗せあり
生活保護 最低生活費を下回る世帯 基準額から収入差引、母子加算あり あり 最後のセーフティネット

まとめ:貧困な家庭も多く存在する

以上、母子家庭が得と言われる理由や裕福に暮らす要因、利用できる手当を見てきました。確かに母子家庭には多様な支援制度が整備されており、状況次第では一般家庭より経済的に有利になる面もあります。しかし一方で、母子家庭の現実は決して楽なものではありません。

「母子家庭は楽をしている」「手当をもらいすぎてずるい」といった偏見は一部の事例だけを捉えた誤解だと言えるでしょう。実際には、公的支援をフル活用してもなお生活に困窮する母子家庭が少なくないのが現状です。

政府や自治体も貧困対策として支援金の拡充や就労支援策を講じていますが、十分に行き渡っているとは言い難く、母子家庭の置かれた状況は依然として厳しいものがあります。

私たち社会が大切にすべきなのは、こうした現実に目を向け、母子家庭に対する理解と支援の輪を広げることではないでしょうか。母子家庭が置かれた経済状況は多様であり、裕福に暮らす家庭もあれば貧困に苦しむ家庭も存在します。

本記事が、シングルマザーへの偏見を和らげ、すべての家庭に対して公平な目線で向き合うきっかけになれば幸いです。

参考資料:

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本記事の監修者

森本 恭平のアバター 森本 恭平 運営者

東北大学法学研究科(公共法政策専攻)修了。幼少期は母子家庭で育った。東日本国際大学・福島復興創世研究所の准教授を経て、現在はデジタルマーケティング✖︎AIを専門にフリーランスとして複数の企業でアドバイザーを務めている。KADOKAWAドワンゴ情報工科学院、バンタンクリエイターアカデミーの講師。福島県総合計画審議委員会の審議員を歴任。

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