シングルマザーとして子育てや仕事に追われる中、「周りに相談できる友達がいない…」と孤独を感じていませんか。実はその悩みはあなただけではありません。
厚生労働省の調査によれば、シングルマザー世帯の約2割は悩みを相談できる相手が「いない」と回答しています。友人関係が希薄になりがちな背景にはさまざまな理由があります。
本記事では、友達がいないシングルマザーに共通する特徴を解説し、友達がいないことは決して悪いことではない理由や、相談相手を作るための具体的な方法について詳しく紹介します。
友達のいないシングルマザーの特徴
シングルマザーが「友達がいない」と感じてしまうのには、いくつか共通する傾向があります。ここでは、特に多く見られる3つの特徴について説明します。
忙しさと経済的負担で友人と会う時間的・金銭的余裕がない
シングルマザーの多くは仕事と育児を一人で担っており、日々時間に追われています。実際、シングルマザーの就業率は非常に高い一方で収入水準は低く、生活に必要なお金と時間を捻出するだけで精一杯になりがちです。
その結果、友人・知人と付き合う余裕がなく、気づけば孤立してしまうケースがあります。東京都が行った調査でも、ひとり親家庭で「仲間や友人がいない」人の理由として「交流する時間がない」が約24.5%にのぼりました。
このように仕事や育児の忙しさと経済的負担の大きさが、シングルマザーから友人との時間を奪いがちなのです。
周囲に同じ境遇の人がおらず孤独を感じやすい
シングルマザーは社会的にまだ少数派であり、身近に同じ境遇の仲間を見つけにくい傾向があります。学校や職場、地域のコミュニティでも周囲は夫婦家庭が多数のため、自分と似た立場の人に出会えず孤独を感じやすいのです。
「シングルマザーであることを周囲に理解してもらえない」「気軽に悩みを話せる相手が見当たらない」といった状況から、自ら打ち明けることをためらい、ますます孤立してしまうケースもあります。
東京都の調査でも、ひとり親の友人がいない理由として「仲間や友人を作る機会がない」(34.0%)や「出会い方がわからない」(28.2%)といった環境要因が上位に挙げられています。このように同じ境遇の人と出会えない環境も、シングルマザーが友達を持てない一因となっています。
離婚の傷や偏見への不安から人付き合いを避けがちである
シングルマザーの中には、過去の離婚や家庭問題で心に傷を負い、人間関係に慎重になっている方もいます。例えば、離婚理由がドメスティックバイオレンス(DV)だったケースでは、「自分の事情を他人に話すのは危険だ」と感じたり、周囲に打ち明けても「そんなふうには見えなかった」と理解されない経験から、人に心を開けなくなることがあります。
NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長も、DV被害による離婚家庭では周囲の無理解や心的ストレスから孤立しやすいと指摘しています。また、「シングルマザーである自分は周囲からどう思われるか不安」「こんな自分では嫌われるのではないか」という自己否定感から、人と関わること自体がストレスに感じてしまう人も少なくありません。
実際、東京都の調査では「自分がひとり親であることを知られたくない」という理由で友人を作らない人も約7.5%いることが報告されています。このように過去のトラウマや周囲の偏見への恐れが心理的な壁となり、シングルマザーが新たな人付き合いを避けて孤立してしまうケースもあるのです。
友達がいないことは悪いことではない
「友達がいない」と聞くとネガティブな印象を持つかもしれませんが、必ずしも悪いことではありません。友達の数が少ないこと自体で自分を責めたり、悲観的になる必要はないのです。むしろ大切なのは友達の「量」ではなく「質」です。
オンラインカウンセリングサービス「cotree(コトリー)」の記事では、「友達は多ければ良いわけではなく、深いコミュニケーションが取れる親しい友人関係を築くことが大事」と強調されています。実際、近年の研究でも「友達の多さ」と「幸福度」は比例しないことが明らかになってきました。
アメリカMITの研究によれば、友人の数がある一定以上増えるとかえって幸福度が下がり、孤独感が増す傾向が報告されています。こうした結果は、「友達が多ければ多いほど幸せ」というのは思い込みに過ぎない可能性を示しています。

また、「幸福な人生に必要なのは、たくさんの知人ではなく信頼できる数人の存在だ」という趣旨の研究もあります。心理学者エド・ディーナー氏の研究では、幸福度の高い人々は「信頼できる親しい人たちと過ごす時間」をしっかり確保していることが共通点として挙げられています。
人類学者ロビン・ダンバー博士も、人間が親密に付き合える友人の数は人生で最大15人程度、特に「非常に親しい友人」はせいぜい5人が限度だと指摘しています。つまり、私たちが幸せな生活を送る上で必要な友人の数は、世間で思われているよりずっと少ないのです。
以上のように、友達がいないことは社会的に孤立しているように見えるかもしれませんが、それ自体ですぐ不幸になるわけではありません。大切なのは、心から信頼できる人が一人でもいるかどうかです。
それがたとえ友達ではなく家族や専門家であっても、あなたが安心して気持ちを話せる相手がいれば十分に心の支えになります。周囲に流されて無理に友人関係を広げるよりも、自分にとって本当に必要な人間関係を大事にする方が、豊かな人生につながるのです。
シンママが相談相手を作る方法
とはいえ、「身近に本音を話せる人が一人もいない」という状況から抜け出したいシングルマザーの方も多いでしょう。ここからは、シングルマザーが新たに相談できる相手(悩みを共有できる人)を作るために有効な3つの方法を紹介します。
自治体の相談窓口や専門の支援団体を活用する
孤独を感じたときは、まず行政や専門機関の力を借りることを検討してみましょう。各自治体にはひとり親家庭向けの相談窓口が設けられており、子育てや生活の悩みを専門の相談員に相談することができます。
例えば、市区町村の福祉課には「ひとり親相談」が常設されていたり、母子・父子自立支援員という担当者が配置されている場合があります。実際に、ひとり親家庭の相談窓口へのアクセス向上や相談支援の充実は国の支援計画でも重要視されています。公的機関の相談員はあなたの状況を客観的に聞き、適切な支援制度や解決策を提案してくれる心強い存在です。
また、シングルマザーを支援する民間団体に相談するのも効果的です。例えば「一般社団法人日本シングルマザー支援協会」のような団体では、シングルマザーからの相談に乗ったり、情報提供や交流イベントの開催などを行っています。先述の赤石さんが理事長を務める「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」などNPO法人も、母子家庭の抱える問題解決や仲間づくりを支援している団体の一つです。
こうした専門機関に連絡をとれば、プロのカウンセラーや先輩シングルマザーからアドバイスをもらえるだけでなく、必要に応じて同じ境遇の人々とのつながりを紹介してもらえる場合もあります。勇気を出して公的・民間の相談窓口を頼ることが、孤独から一歩踏み出す第一歩になるでしょう。
地域の交流会やイベントに参加してみる
次に、地域で開催されている交流会やイベントに参加する方法があります。各地の自治体や社会福祉協議会、母子寡婦福祉会などでは、ひとり親家庭向けの交流イベントや勉強会を開催していることがあります。
例えば、神奈川県横須賀市では「ひとり親家庭の生活支援講座・交流会」と題して、ひとり親同士の情報交換や親子で楽しめるイベントを定期的に行っています。こうした場では同じ立場の親が集まるため、お互いの悩みや経験を共感しあえる貴重な出会いの機会になります。
交流会の内容は自治体によって様々ですが、子連れで参加できるレクリエーション(季節のレジャー、料理教室、親子スポーツ大会など)や、専門家を招いた子育て講座、法律相談会を兼ねた懇親会などが企画されています。
参加費が安価または無料に設定されていることも多く、経済的な負担を気にせず利用できるのもメリットです。最初は緊張するかもしれませんが、「同じ境遇の仲間を作りたい」という思いで来ている人ばかりですので、思い切って飛び込んでみましょう。顔見知りが増えるだけでも日常の安心感は違いますし、気の合う人が見つかれば悩みを相談し合える友人関係に発展する可能性もあります。
オンラインや専用アプリで気軽に悩みを共有する
直接会う時間が取りにくい方や、まずは匿名で情報収集したい方には、オンライン上で相談相手を見つける方法もあります。今はSNS上のママコミュニティやQ&Aサイトなど、子育ての悩みを相談できる場所が充実しています。特に最近では、シングルマザー限定のオンラインサービスも登場しています。
例えば、ひとり親限定のトークアプリ「ペアチル」は、同じひとり親同士で気軽に雑談や相談ができる無料アプリです。2023年6月にリリースされたこのアプリは、「#子育ての相談ができる人がいない」「#子どもが発達障害」など自分の境遇に合ったタグを設定することで、似た境遇のひとり親同士をマッチングしてチャットできる仕組みを持っています。開発者自身がシングルマザー家庭に育った経験から、「孤独や情報格差を埋めたい」との思いで作られたアプリであり、多くのシングルマザー・シングルファザーが悩み相談や励まし合いに利用しています。
ペアチル以外にも、FacebookやTwitter上のシングルマザー向けグループ、匿名掲示板の子育て相談スレッドなど、オンラインで繋がれるコミュニティは多数存在します。メリットは、時間や場所にとらわれずに相談できる点と、自分と似た状況の人を見つけやすい点です。
顔が見えない分、本音を打ち明けやすいという利点もあります。まずはオンライン上で情報交換し、気が合う相手がいれば徐々に個別にやり取りしてみるのも良いでしょう。ただし、不特定多数が集まる場では誤った情報やトラブルも起こり得ますので、個人情報の取り扱いや相手選びには注意が必要です。
まとめ:友達がいるから幸せとは限らない
「友達がいない」という状況は、ときに不安や劣等感を招くかもしれません。しかし、友人関係の有無と幸せはイコールではありません。大事なのは、あなた自身とお子さんが笑顔で毎日を過ごせることです。友達の多寡にとらわれず、信頼できる人間関係を一つずつ築いていけば、それは必ずあなたの支えになります。
周囲には家族や昔からの知人、同僚など、これまで意識していなかっただけで相談に乗ってくれる人がいるかもしれません。また、本記事で紹介したような公的機関やコミュニティに目を向ければ、同じ悩みを共有できる仲間や専門家と繋がることもできます。
友達がいない現状を悲観する必要はありません。むしろ無理に友達を増やすことよりも、今そばにいる大切な人との絆や、新たに出会った一人ひとりとのご縁を深めていくことが、幸福な生活につながるのです。
最後に、改めて強調したいのは「友達がいるから幸せとは限らない」ということです。幸福度の高い人に共通するのは、友達の数ではなく質であり、心から信頼できる人と深く繋がっていることです。
たとえ周りに友人が少なくても、あなたが安心できる居場所や人間関係があれば、それだけで十分に幸せを感じられるでしょう。どうか自分自身のペースで、あなたにとって心地よい人間関係を築いていってください。友達の有無に振り回されず、シングルマザーとして胸を張って日々を歩んでいきましょう。
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