母子家庭で育って父親を知らない人はいる?探す方法や注意点を解説

母子家庭で育って父親を知らない人はいる?探す方法や注意点を解説

「父親の顔を知らないまま大人になった」「母子家庭で育ったけど本当の父親がどんな人か気になる」――。近年、日本では離婚や未婚などの理由で父親と一緒に暮らしたことがない人も増えています。

実際、厚生労働省の調査でも母子家庭の約7割が「父親と面会交流がほとんどない」と答えており、父親の存在を知らずに成長した人は決して珍しくありません 。

本記事では、母子家庭で育って父親を知らない人が実際にどのくらいいるのか、父親を探す方法や、実際に会いに行くときの注意点まで、信頼できる情報をもとに詳しく解説します。あなた自身や身近な人のルーツ探しに役立ててください。

目次

母子家庭で育って父親を知らない人はいる?

結論から言えば、母子家庭で育ち父親を知らない人は大勢います。厚生労働省の全国調査では、母子世帯の約70%が離別後に父親との面会交流を行っていない状況にあります。父親との交流がないということは、子どもにとって父親の存在が身近でない、あるいは全く知らないまま育つことを意味します。

また、母子家庭になる理由としては、離婚のほか、未婚の母が占める割合も歴史的に高いことが指摘されています。実際、1980年代の政府調査では未婚の母による母子家庭が過半数を占めていたとのデータもあります。未婚で父親と籍を入れていない場合、子どもは生まれた時から父親を知らないままです。このように、日本でも父親を知らずに育つ子どもは珍しくないのです。

父親を知らずに育った人の中には、「自分だけが特別なのでは」と感じる方もいるかもしれません。しかし上記のように、日本全国で統計的に見ても同様の境遇の人は多数います。離婚で父親と離れ離れになったケース、父親が養育に参加しなかったケース、生まれる前に両親が別れてしまったケースなど事情は様々ですが、「父親を知らないまま育った」という経験を持つ人は確実に存在するのです。

大切なのは、そうした境遇に自分ひとりで悩まないことです。同じ境遇の人は決して少なくなく、必要であれば公的な相談機関や支援団体に相談することもできます。

父親を探す方法

父親の顔を知らない人が「父親を探したい」と思ったとき、具体的にどんな手段があるでしょうか。ここでは、代表的な3つの方法について説明します。

方法1:公的記録や身近な情報から手がかりを得る

まずは自力でできる範囲で情報収集を行いましょう。

自分でできる調査として有効なのが、戸籍などの公的書類をたどる方法です。市区町村の役所で戸籍謄本や戸籍の附票を取得すれば、父親の現在の住所を調べられる可能性があります。法律上、他人の戸籍は勝手に取れませんが、自分から見て親にあたる人や祖父母の戸籍謄本であれば取得が可能です。

例えば離婚後に父親が転居届を出していれば、その戸籍附票から最新の居住地を突き止めることができます。一方で、父親が引っ越しを役所に届け出ていなかったり、既に除籍になっている場合は、戸籍を追っても現住所を確認できないこともあります。そのため、戸籍調査だけでは手がかりが得られないケースもある点に注意が必要です。

戸籍以外にも、身近な情報源をフル活用しましょう。たとえば親戚や昔の知人に当たってみるのは基本的な方法です。母親や親族に勇気を出して事情を聞いてみれば、思わぬ情報を得られるかもしれません。

また、インターネットやSNS検索も現代では有力な手段です。実名で検索エンジンに父親の名前を入れてみたり、FacebookやTwitterなどで名前や出身校を探すと、何らかの手掛かりが見つかる可能性があります。とりわけ、Facebookは本名登録が一般的で、年齢層も幅広いため、父親本人にたどり着きやすいと言われています。

ただし、SNSで見つけた場合でも、いきなり連絡を取る前にメッセージ内容を慎重に考えることが大切です。いきなり突然連絡すると相手が不審に思い、せっかくの再会の機会が台無しになる恐れもあります。まずは自分で出来る範囲の情報集めから始め、得られた断片を繋ぎ合わせていくことが、父親探しの第一歩となります。

方法2:警察に相談する(捜索願の提出)

警察に捜索願を提出して相談する方法もあります。父親の行方が全くわからず、自力での調査が難航するケースでは、警察に行方不明者届を出すことも選択肢の一つです。

例えば、高齢の父親が認知症を患って失踪した疑いがある場合や、事件や事故に巻き込まれた可能性がある場合には、警察は迅速に捜索を開始してくれます。警察は広範な捜査網を持っているため、緊急性が高い場合には心強い味方となるでしょう。

ただし、警察が積極的に動いてくれるのは事件性や緊急性が高い場合に限られる点に注意が必要です。 一般的な「生き別れで連絡が取れない」程度のケースだと、犯罪性がない限り警察は捜索活動を行いません。警察の本来の役割は事件捜査であり、単なる所在不明の人探しは業務範囲外とみなされるからです。

そのため、「特に事件性はないが父親を探したい」という場合に警察へ相談しても、積極的には動いてもらえない可能性が高いです。捜索願を受理してもらえたとしても情報提供の呼びかけ程度に留まり、自力での調査と並行して進める必要があるでしょう。警察への相談は、命の危険や事件の可能性がある時の最終手段と考え、そうでない場合は他の方法自力調査や探偵等を検討するのが現実的です。

方法3:探偵など専門の調査機関に依頼する

自分だけでは難しい場合、探偵事務所など人探しのプロに調査を依頼する方法があります。

探偵業者は、人探し調査の専門知識とノウハウを持ったプロフェッショナルです。実際、自力での調査や警察で対応できないケースでは、探偵に依頼することで生き別れた父親を見つけ出せる可能性が高まります。特に、父親が住民票の届け出を怠っていて戸籍だけでは行方がわからない場合など、公的文書の調査だけでは限界があるケースで探偵の出番となります。

探偵に依頼すると、まず依頼者から提供された断片的な情報をもとに調査が開始されます。戸籍の情報確認はもちろん、現地での聞き込み調査や公開情報の解析など、探偵独自のネットワークと技能を駆使して所在を突き止めていきます。

警察が対応しないような案件でも、探偵であれば法律の範囲内で粘り強く追跡してくれます。ただし、探偵に依頼する場合は費用がかかる点と、業者選びに注意が必要です。不当に高額な料金を請求する悪質な業者も存在するため、公安委員会への届出がなされている信頼できる探偵事務所かどうかを確認し、複数の業者から見積もりを取って比較することが望ましいでしょう。適切な探偵に依頼できれば、自分では得られなかった手がかりを掴み、父親との再会への道筋が開けるかもしれません。

父親を知りたいと思ったときの注意点

父親の所在がわかり、「いよいよ会ってみたい」「どんな人か知りたい」と思ったとき、実際に行動に移す前に注意すべきポイントがあります。ここでは、父親探しや再会を望む際に心に留めておきたい3つの注意点を解説します。

注意1:理想と現実のギャップを覚悟すること

父親に対する理想像と、実際の現実が異なる可能性が高いことを理解しましょう。

長年会っていなかった父親に対しては、「きっと優しい人に違いない」「再会すればすぐに打ち解けられるはず」といった理想や期待を抱きがちです。

しかし、現実は必ずしも理想通りとは限りません。離ればなれになった経緯についてお互いに誤解がある場合もあり、極端な例では父親がこちらに対して複雑な感情、ひいては恨みのような感情を持っている可能性すらあります。

理想と現実のギャップに対する覚悟を持つことが大切です。久しぶりに会った父親が自分の想像していた人柄とは違ったり、新しい家庭を築いていて自分との関係に消極的だったりする可能性もあります。実際、父親が再婚して別の家族と暮らしている場合、新たな家庭での立場や事情があるため、急に現れた子どもに戸惑うことも考えられます。

こうした現実に直面するとショックを受けるかもしれませんが、あらかじめ「理想通りにはいかないかもしれない」と心の準備をしておけば、落ち着いて対処できるでしょう。大切なのは、どんな結果になっても自分を見失わず受け止める心構えを持つことです。

注意2:父親が再会を拒否する可能性も考慮する

苦労して探し出しても、父親側が会うことや交流を拒む可能性がある点を忘れないでください。

血縁関係があるとはいえ、長年疎遠だった親子が再会することに必ずしも双方が前向きとは限りません。現に、人探しの専門家も「探偵が見つけ出したとしても、本人(父親)が再会を拒否する可能性もある」と指摘しています。

これは、父親側にも新しい生活や感情があり、今さら昔のことに向き合いたくないと感じるケースがあるためです。特に父親が過去を忘れたいと思っていたり、自分の家庭内で現在の立場を守りたいと考えている場合、突然現れた子どもと会うことに消極的だったり拒絶したりするかもしれません。

こうした可能性に備え、相手の意思を尊重する姿勢を持ちましょう。もし連絡を取った際に父親が明確に会いたくないという意志を示した場合、無理強いするのは逆効果です。一度断られたからといって感情的になったり、しつこく迫ったりすれば、かえって関係修復の機会が遠のいてしまいます。

辛いかもしれませんが、そのときは一旦身を引き、時間を置いて状況が変わるのを待つことも選択肢です。また、直接聞けなくても第三者(親戚など)を通じて父親の本心を探ってもらう方法もあります。いずれにせよ、「再会は双方の合意があって初めて叶うもの」であることを理解し、相手の気持ちを尊重することが大切です。

注意3:再会の方法と場を慎重に選び、冷静に対面する

父親と実際に会う際は、場所や切り出し方に配慮し、落ち着いて対面するよう心掛けましょう。長年会っていない父親と初めて会う場面では、お互いに緊張や不安を感じるのが普通です。そのため、会う場所は慎重に選ぶ必要があります。

人目がある場所であれば万一会話がうまく進まなくても適度に切り上げやすく、安全面の配慮にもなります。また、実際に父親と会話する際の伝え方にも注意が必要です。

久しぶりに会えた喜びや「これまで会いたかった」という正直な気持ちを伝える一方で、過去の離別の原因について詰問したり非難するような言動は避けるべきです。父親側にも複雑な事情や感情がある可能性があり、責めるような態度を取ればせっかくの再会が気まずい雰囲気になったり、再び関係がこじれる恐れがあるからです。

再会時には冷静さと思いやりを持つことが大切です。事前に「なぜ会いたいのか」「何を伝えたいのか」を整理し、最初の会話でその旨を簡潔に伝えると良いでしょう。「あなたに会ってお礼が言いたかった」「自分のルーツを知りたかった」など率直で前向きな理由を伝えれば、相手も安心し受け入れやすくなります。

一方で、いきなり感情的に「どうして今まで会ってくれなかったの?」などと責めるのは避けましょう。初対面では、笑顔で挨拶し、相手の近況に耳を傾けるくらいの余裕を持つのが理想です。緊張してうまく話せない場合は、あらかじめ聞きたいことを書き出してメモを持参するといった工夫も有効です。再会の場は一度きりではありません。

適切な手段を踏めば会える可能性はある

母子家庭で育ち父親を知らない人は、日本において決して珍しくありません。家庭の事情でたまたま父親と離れて育っただけであり、恥ずかしいことでも特別なことでもないのです。もし大人になってから「やはり父親のことを知りたい」「会ってみたい」と思った場合は、本記事で紹介したような戸籍の調査関係者への聞き取り警察や探偵の力を借りる方法があります。

しかし、実際に行動を起こす際には十分な準備と覚悟が必要です。理想と現実の違いに直面するかもしれませんし、父親が会うことを望まない可能性もあります。それでも、自分のルーツを確かめたいという気持ちは自然なものですし、適切な手順を踏めば再会が実現するケースも多くあります

まずは焦らず、信頼できる方法で情報を集め、周囲の助けも得ながら進めてみましょう。そして、いざ父親と向き合うときは、お互いの立場や気持ちに配慮し、冷静かつ誠実に接することが大切です。本記事の内容が、父親との縁を取り戻す一助となれば幸いです。

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本記事の監修者

森本 恭平のアバター 森本 恭平 運営者

東北大学法学研究科(公共法政策専攻)修了。幼少期は母子家庭で育った。東日本国際大学・福島復興創世研究所の准教授を経て、現在はデジタルマーケティング✖︎AIを専門にフリーランスとして複数の企業でアドバイザーを務めている。KADOKAWAドワンゴ情報工科学院、バンタンクリエイターアカデミーの講師。福島県総合計画審議委員会の審議員を歴任。

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