未婚を選んだシングルマザーが嫌いな人に共通する3つの理由

未婚を選んだシングルマザーが嫌いな人に共通する3つの理由

近年、自ら未婚のまま子どもを産み育てる「未婚のシングルマザー」が徐々に増え注目されています。選択的シングルマザーの増加の背景には、女性の社会進出による経済的自立が進み「結婚という形にこだわらなくなってきた」ことが指摘されています。

とはいえ、未婚でシングルマザーになる女性たちは様々な困難や偏見に直面します。例えば、アイドル出身のタレント最上もがさんは未婚で妊娠・出産した際、「シングルなんて子どもがかわいそうだ!」といった心ない批判をSNS上で多数浴びせられたと明かしています。

では、なぜ未婚のシングルマザーに対してそのような否定的感情を抱く人がいるのでしょうか。本記事ではまずなぜ女性が未婚の道を選んで母親になるのかを整理し、その後で未婚シングルマザーを嫌う人に共通する3つの理由を詳しく解説します。

目次

なぜ未婚を選んでシングルマザーになるのか?

まず初めに、女性があえて結婚という選択肢を取らず未婚の母になる理由にはどのようなものがあるのか見てみましょう。人それぞれ事情は異なりますが、代表的な理由を整理すると以下のようになります。

理由1 結婚は望まないが子どもは持ちたい

現代ではキャリアや自分のライフスタイルを重視し、「結婚による生活の変化に縛られたくないが子どもは欲しい」と考える女性がいます。経済的に自立しており結婚せずに母になる道を自身の人生設計の一部として選択するケースです。実際「結婚したくはないが子どもは欲しかった」ことが未婚の母となった一因だという女性もいます。

理由2 パートナーとの結婚が叶わなかった

交際相手との間に妊娠したものの、相手が既婚者であったり結婚を拒否したためやむを得ず未婚の母となる場合も少なくありません。例えば、不倫関係で妊娠したが相手が離婚に応じない場合や、恋人に妊娠を告げた途端に結婚を拒まれ関係が解消してしまった場合などです。このようにパートナーとの結婚という選択肢が取れず、結果的に未婚で出産しシングルマザーになるケースもあります。

未婚で母になる背景には主体的な人生観や事情があります。「結婚より子どもを持つことを優先したい」「結婚制度に疑問を感じる」「相手との関係上、結婚が不可能だが子どもは産みたい」等、その理由は様々です。

日本でも未婚シングルマザーは少しずつ増えてきており、一部の著名人が選択的シングルマザーを公表する動きも見られます。しかし、その一方で未婚の母に対する社会の視線は依然として厳しいものがあり、時に強い批判や偏見の目にも晒されます。

未婚を選んだシングルマザーが嫌いな人に共通する3つの理由

未婚で母親になる道を選ぶ女性たちに対し、「嫌い」「受け入れられない」と感じる人々には、いくつか共通する思考パターンや価値観が見られます。ここでは、そうした否定的感情を抱く人たちに共通すると考えられる3つの理由を解説します。

理由1:古い家族観と「子どもがかわいそう」という偏見

伝統的な家族観に根差した否定的な見方が、未婚シングルマザーへの反感の大きな理由の一つです。日本社会では今なお「父・母・子どもが揃った家庭こそ普通で望ましい」という空気が根強く、この理想的な家族像から外れる家庭は「何か欠けている」とみなされがちです

そのため未婚の母子家庭は周囲から「十分な家庭環境ではない」という偏見の目で見られやすく、古い価値観を持つ人ほど批判的になりがちだとされています。実際、未婚の母である女性に対して「なぜ結婚しなかったの?」と否定的な視線を向けたり、陰口を叩かれるケースも少なくありません。

顕著なのが「子どもがかわいそう」という指摘です。未婚で子どもを育てると聞くと、父親がいないことを理由に「その子は不幸になるのではないか」と決めつける人がいます。前述の最上もがさんも、未婚の妊娠公表時に「シングルなんて子どもがかわいそうだ」と批判する声を浴びました。

しかし彼女は「産む前から不幸と決まっている子なんていない」「両親がいても不幸な子はいる」と反論しています。実際、「ひとり親だから不幸」「愛情不足で育つに違いない」といった決めつけは想像力の欠如から生まれる偏見に過ぎず、両親が揃っていれば必ずしも全てうまくいくわけではありません。

虐待や貧困など、両親のいる家庭でも子どもが不幸になる例は現実にあります。

それでもなお「未婚の母=子どもが哀れだ」という偏見が根強い背景には、批判する側の優越感も指摘されています。「片親家庭は普通じゃない」とレッテルを貼ることで、「自分は揃った家庭に生まれたからあなたよりマシだ」という無意識の優位性に浸っているのではないか——との分析もあります。

いずれにせよ、昔ながらの家族観に基づく「父親のいない家庭は不完全」という偏見が、未婚シングルマザーへの否定的感情を生んでいるのです。

理由2:強い自己責任論と公的支援への反感

日本社会には困窮や不幸を本人の自己責任と捉える風潮が根強くありますが、未婚のシングルマザーに対してもその矛先が向けられます。つまり「結婚しないで子どもを産む道を選んだのだから、苦労して当然」「生活が大変なのは自業自得だ」という論調です

実際、シングルマザーが貧困に苦しんでいる現状に対し「子どもを一人で育てると決めたのは自己責任だ」「貧しくなると分かっていて産んだのだから同情できない」といった意見は決して少なくありません。離婚や未婚などひとり親になる経緯は様々であるにもかかわらず、「自分で選んだんでしょ?」という視点で語られ、その結果「苦労して当然」という考えが生まれやすくなるのです。

こうした自己責任論に基づく批判の裏には、公的支援への反感も潜んでいます。未婚のシングルマザーの中には収入が低く公的扶助や手当を受けながら子育てしている人も多いため、「税金で甘やかすな」「好きで未婚の母になった人に支援する必要はない」といった否定的意見を持つ人もいます。

例えば、母子家庭に支給される児童扶養手当などについて「自分たちの税金で賄われているのに、軽々しく頼るのはおかしい」といった批判がSNS上で見られることもあります。この背景には、シングルマザーの貧困問題が深刻で公的支援なしには生活が厳しい実情があるからこそとも言えます。

実際、日本のひとり親家庭の相対的貧困率は先進国でも最悪レベルであり、シングルマザーの平均年間就労収入はわずか236万円程度と、同じ子どものいる世帯平均の約半分に過ぎません。厚労省の調査でも、シングルマザーの約7割が年収300万円未満で、そのうち2割は年収100万円未満という厳しい状況が明らかになっています。

つまり多くのシングルマザーは懸命に働いても生活が苦しく、公的支援に頼らざるを得ない現状があります。にもかかわらず、一部の人はその状況を理解せず「自分で選んだ道なのだから国の支援に頼るな」という冷ややかな目を向けているのです。

理由3:シングルマザーへのステレオタイプな偏見

未婚のシングルマザーに対するステレオタイプなイメージが嫌われる背景になることもあるでしょう。一部の人々は、未婚で子どもを持つ女性に対して根強いネガティブなレッテル貼りをします。「未婚で母になるなんて男性関係がだらしないに違いない」「家庭を持つ資格がないような人間だ」といった偏見です。

例えば、インターネット上の声には「シングルマザーは厚かましい人が多い」「自分勝手で子どもより男を優先するような母親ばかりだ」といった決めつけが散見されます。

また、「周りのシングルマザーは下品でいつも愚痴ばかり。シングルを見ると関わりたくないと思ってしまう」といった偏見のエピソードが語られることもあります。このように、実際にはごく一部の例であったり根拠のない印象にすぎないことを、未婚シングルマザー全体の性格や生活態度の問題であるかのように語る人がいるのです。

しかし、そうしたネガティブなイメージの多くは事実に基づかない偏見です。たとえば「ひとり親家庭の子は将来不倫しやすい」といった俗説がSNSで拡散されたことがありましたが、調べても裏付ける統計データは存在しません。

また「片親家庭の子は非行に走りやすい」というデータがあるのも事実ですが、それはひとり親であること自体が原因ではなく、貧困や孤立、支援不足といった社会的要因に起因するものであり、「未婚の母の子だから問題行動を起こす」という直接的な因果関係は示されていません。

つまり、未婚シングルマザー本人やその子どもに対する否定的評価の多くは思い込みによるレッテルであって、統計や専門的研究に裏付けられたものではないのです。

自己決定はどこまで尊重されるべきなのか?

ここまで、未婚のシングルマザーに否定的な見方をする人々の主な理由を見てきました。それでは逆に、本人が選んだ生き方である「未婚で母になる」という自己決定は、社会においてどの程度尊重されるべきなのでしょうか。

結論から言えば、個人の自己決定は最大限尊重されるべきだというのが現代社会の基本的な価値観です。日本国憲法でも個人の尊厳や幸福追求権が謳われているように、結婚するかしないか、子どもを産むかどうかは本来その人自身が自由に決められる事項です。

他人や社会がそれを一方的に「良い悪い」と判断し、過度に干渉すべきではありません。未婚のシングルマザーという生き方も、多様化する家族の姿の一つとして尊重されるべき選択肢と言えます。

もっとも、本人の自己決定には社会的な責任も伴います。子どもを育てる以上、その子の幸せと健全な成長に責任を持つのは親です。未婚であっても経済的・精神的に自立し、十分な養育環境を整える覚悟が求められます。

実際、選択的シングルマザーを選ぶ人の多くは事前に経済計画を立てたり支援制度を調べるなど、相応の準備と覚悟を持って臨んでいます。社会としても、そうした前向きな自己決定をした母親と子どもが不利益を被らないよう、必要な支援や配慮を行うことが大切です。

もちろん、子どもの権利や福祉を最優先に考える必要はありますが、家族の形は一つではないという認識の下、誰もが自分らしい家庭を築ける社会が望まれるのです。

まとめ:家族の多様化なのか?

未婚のシングルマザーに対する否定的な意見の根底には、伝統的な家族観や自己責任論、偏見など様々な要因があることが分かりました。一方で、未婚で母になるという選択は個人の自由であり、現代はそれを可能にする社会状況も整いつつあります。

結婚形態や家族のあり方は年々変化しており、かつて典型とされた「夫婦と子ども」の核家族だけが家族の姿ではなくなりつつあります。離婚やひとり親家庭も珍しいものではなくなり、家族の多様化が急速に進展しているとの指摘もあります。

そうした中で、未婚シングルマザーという生き方も家族の多様化の一端であることは間違いありません。

とはいえ、日本において未婚の母はまだ少数派であり、社会の理解が追いついていない部分もあります。特に、年配層や保守的な価値観の人々には抵抗感が根強く、今回挙げたような批判が向けられることもあるでしょう。

しかし時代とともに人々の意識も少しずつ変わりつつあります。家族に対する考え方についても、男性より女性の方が柔軟で多様な家族像を受け入れる傾向が高いという調査結果があります。今後、世代交代や価値観のアップデートが進めば、未婚のシングルマザーも特別なものではなく一つの家族のかたちとして受け入れられていくでしょう。

大切なのは形式ではなく子どもを愛し育むことだという本質に社会全体が立ち返るべき時期に来ているのではないでしょうか。未婚か既婚かに関わらず、すべての親子が周囲の偏見に苦しめられることなく、それぞれの幸せを追求できる社会を目指したいものです。

そのためにも、私たち一人ひとりが古い固定観念にとらわれず、新しい家族の形を理解し支えていく姿勢が求められていると言えるでしょう

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本記事の監修者

森本 恭平のアバター 森本 恭平 運営者

東北大学法学研究科(公共法政策専攻)修了。幼少期は母子家庭で育った。東日本国際大学・福島復興創世研究所の准教授を経て、現在はデジタルマーケティング✖︎AIを専門にフリーランスとして複数の企業でアドバイザーを務めている。KADOKAWAドワンゴ情報工科学院、バンタンクリエイターアカデミーの講師。福島県総合計画審議委員会の審議員を歴任。

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