キラキラネーム光宙(ピカチュウ)は実在する?本人の現在や名付けの注意点

キラキラネーム光宙(ピカチュウ)は実在する?本人の現在や名付けの注意点

キラキラネームとは、一見しただけでは読めないような当て字や奇抜な読みを持つ名前のことで、近年社会問題としても注目されています。なかでも「光宙(ピカチュウ)」という名前は、そのインパクトからネット上で伝説のように語られてきました。

実際にポケットモンスターの人気キャラクター「ピカチュウ」と同じ読みの名前を子どもに付けた親がいるのか? もし本当に存在するなら、本人は今どのように生活しているのでしょうか?

そして、こうしたキラキラネームを名付けることへの注意点とは何なのでしょうか。この記事では、これらの疑問に答えるとともに、子どもの将来を考えた適切な命名について解説します。

目次

キラキラネーム光宙(ピカチュウ)は実在する?

結論から言えば、「光宙(ピカチュウ)」と名付けられた子どもは実在します。2012年に当時自民党総裁だった安倍晋三氏(故人)が講演で「『光宙』と書いて『ピカチュウ』と読ませる名前」を実例に挙げ、キラキラネームを付けられた子の多くがいじめに遭っていると指摘しました。

安倍氏は「子どもはペットではないのだから、そういう親も指導しなければいけない」と厳しく批判しており、この発言によって「光宙(ピカチュウ)君」が実在することが広く知られるようになったのです。実はその前年の2011年には週刊ポストが「光宙(ピカチュウ)」という名前の男児について取り上げて話題になっており、少なくとも一人は現実にこの名前で戸籍登録された子どもがいると考えられています。

なお、「光宙(ピカチュウ)」以外にも報道やネット上で注目されたキラキラネームの実例は多数あります。例えば「泡姫(アリエル)」「皇帝(プリンス)」「悪魔(あくま)」など枚挙にいとまがありません。

「悪魔ちゃん命名騒動」として、1993年に両親が出生届に「悪魔」と名付けようとして行政が受理を拒否したケースもありました。この「悪魔ちゃん」事件では、家庭裁判所が「命名権の濫用」に当たるとしてその名を不適当と判断し、最終的に両親は別の名前に改めることになっています。こうした極端な例はあるものの、「光宙(ピカチュウ)」程度であれば当時の法律上は戸籍に登録できてしまったわけです。事実、常用漢字で書かれた名前なら読み方は役所が関与しないという従来の慣習の下で、「光宙」という漢字と「ピカチュウ」という読みの組み合わせも受理されてしまったと考えられます。

あれから改名手続きを実行したのか?

それでは、「光宙(ピカチュウ)」と名付けられた本人は、後になって改名したのでしょうか?

結論として、公的な記録や報道で光宙君が改名したという事実は確認されていません。少なくとも現在までに「光宙」から別の名前へ変更したというニュースは出ておらず、本人や家族が公に語った情報も見当たりません。

おそらくプライバシーの問題もあり、具体的な改名の有無は明らかにされていないのでしょう。

ただし、一般論としてキラキラネームの改名は可能です。日本の法律では、名前を変えるには家庭裁判所の許可が必要であり、「正当な事由」が求められます。正当な事由とは「名前を変更しないとその人の社会生活において支障を来す場合」を指し、単なる個人的な好みや感情だけでは認められません。

たとえば、「難読すぎて日常生活で支障が出ている」「珍奇な名で本人が強い苦痛を感じている」などが正当事由に該当しうる理由です。

実際に、キラキラネームを改名した例も報じられています。例えば、「王子様(おうじさま)」という名で生まれた男性が18歳で家庭裁判所に申し立てを行い、「肇(はじめ)」という名前に改名したケースが有名です。この男性・赤池肇さんは高校卒業直前に一人で家裁に赴き、「王子様では生きづらかった」ため自分の意思で改名を決意しました。

改名が許可された際には「名前の変更許可がおりました!!!」とSNSで報告し、大きな反響を呼んでいます。彼の場合、幼少期に自分の名前を「変かも」と感じ始め、周囲からも「王子」とあだ名で呼ばれるなどして違和感を募らせていたといいます。

このように、成長後に本人が望んで改名するケースは現実に存在するのです。「光宙君自身が改名したか?」は不明ですが、仮に本人が名前により深刻な不都合を感じれば、同様の手続きを取った可能性はあります。もっとも未成年の場合は親権者の同意・協力も必要になるため、本人の意思だけですぐ改名できるわけではありません。いずれにせよ、「ピカチュウ」という名前で成長することの困難さは想像に難くなく、改名に踏み切るハードルも高いことから、現段階で改名済みかどうか断言できない状況です。

光宙(ピカチュウ)は現在どうしているのか?

では、その「光宙(ピカチュウ)」と名付けられた本人の現在はどうなのでしょうか?

残念ながら、個人が特定されるような詳細情報は公表されていません。ただ、週刊誌で報じられた2011年当時に幼児~小学生程度だったと推測すると、現在は十代後半から二十代前半になっている可能性があります。つまり高校生・大学生、あるいは社会人になっていてもおかしくない年齢です。

もし光宙君が現在も本名を維持しているなら、本人なりの工夫や覚悟を持って日々を過ごしているのではないでしょうか。一方で、すでに周囲には通称(別の読みやニックネーム)で呼んでもらっている可能性や、公式には改名して穏やかに暮らしている可能性も否定できません。

いずれにせよ、彼の現在の様子は推測の域を出ませんが、少なくともその名前がもたらす影響から完全に解放されることは難しかっただろうと考えられます。

キラキラネームをつける前に考えるべきこと

以上の事例からも明らかなように、子どもに奇抜すぎる名前をつけることには様々なリスクや問題点があります。ここからは、これから親になる方々がキラキラネームを名付ける前にぜひ考慮すべき3つのポイントを説明します。

その1 子どもがいじめられたり名前を恥ずかしく感じるリスク

まず第一に、名前のせいで子どもが精神的・社会的な苦痛を味わうリスクを真剣に考える必要があります。ユニークな名前は話題性がありますが、周囲の子どもたちから見ると格好のからかいの種になるおそれがあります。

実際、安倍晋三元首相も「キラキラネームをつけられた子の多くがいじめられている」と指摘しており、珍奇な名前が原因で学校でからかわれたり仲間外れにされたりするケースが少なからず存在すると考えられます。たとえ直接的ないじめに発展しなくても、本人が名前を理由に劣等感を抱いてしまう可能性も忘れてはなりません。

先述の改名例のように、周囲が好意的に接してくれていても本人自身が「自分の名前がおかしいのでは」と感じてしまうことがあります。特に思春期以降は本人の自己意識が高まるため、ユニークすぎる名前はかえって本人のアイデンティティを揺るがし、親への不信や恨みにつながることすらあるでしょう。

子どもは自分で名前を選ぶことができず、親から与えられた名前で人生を歩むしかありません。その名前によってもし孤独感や恥ずかしさを感じるようになれば、それは親が意図せずとも子どもに負わせてしまった十字架と言えます。

名前は本人にとって一生付き合う大切なものです。他人から笑われたり奇異の目で見られたりする可能性が少しでもある名前は、たとえ愛情を込めたものであっても子どもの立場に立って再考することが望ましいでしょう。親としては「特別な名前で唯一無二の存在にしてあげたい」という思いがあるかもしれません。しかし、名前のせいで子どもがつらい経験をするリスクと、そのリスクを取ってまで奇抜な名を付けるメリットとを冷静に天秤にかける必要があります。

その2 戸籍で受理されない可能性など法的リスク

第二に、法的・行政的な観点からも名前の制約を把握しておくことが重要です。実は現在、あまりにも奇抜な読み方の名前は戸籍上受理されない可能性が高まっています。2024年に戸籍法が改正され、2025年5月からは戸籍に子どもの名前の読み仮名も記載されることになりました。

これに伴い法務省は各自治体に対し、「一般に認められているもの」以外の読み仮名は受理しない方針を示しています。具体的には、出生届に特殊な読みが記されていた場合、親にその読みが実在することを示す資料の提出を求め、自治体で判断できなければ法務局が判断するという運用になります。

このガイドラインにより、従来は届け出が通っていたような奇抜な当て字・読みの名前はほぼ使えなくなる見通しです。実際、説明会で例示された「光宙(ピカチュウ)」や「七音(ドレミ)」「桜桜桜(みっつ)」といった名前は、今後はまず認められないだろうと言われています。

このように現在では行政側が一定の歯止めをかけつつありますが、戸籍法改正前は漢字さえ問題なければ読み方は事実上ノーチェックでした。そのため、「光宙」を「ピカチュウ」と読むといった極端なケースも当時は法的には容認されてしまっていたのです。

一時期、法制審議会(法相の諮問機関)が検討した中間試案では「漢字の慣用的な読み方か字義と関連があれば認める」という案が含まれており、「光宙=ピカチュウ」もその方針なら認められる可能性が高いと法務省担当者がコメントして物議を醸したこともありました。

しかし世論の批判も踏まえてか、最終的には先述のように読み仮名について厳格化する方向に舵が切られています。要するに、今後は親が「この漢字にこんなファンタジックな読みを当てたい!」と思っても、そもそも戸籍に登録できず門前払いとなるケースが出てくるということです。

その3 改名には手間とハードルがあり簡単ではない

第三に、一度つけた名前を後から変えることの大変さについて理解しておく必要があります。たとえ親が「嫌なら将来変えればいい」と思って名付けても、改名は本人に大きな負担を強いる行為です。法律上、前述の通り名前の変更には家庭裁判所の許可が必要であり、そのハードルは決して低くありません。

裁判所は「正当な事由」があるか厳格に審査し、「単なる個人的感情・信条では足りない」と明言しています。つまり本人が「この名前が嫌だから」という主観的理由だけでは許可されず、たとえば「珍名のせいで就職を何度も落とされた」「名前を理由にいじめられ不登校になった」といった客観的に見て深刻な支障が求められるのです。

さらに、改名手続き自体にも手間と時間がかかります。家庭裁判所への申立てには戸籍謄本などの書類を揃え、800円分の収入印紙や郵券(切手)を準備しなければなりません。申立書には改名理由を詳述し、必要に応じて証拠資料(通称使用実績や医師の診断書など)を提出することになります。

審理には通常2週間から1か月半ほどかかり、その間は結果を待つしかありません。無事に許可が下りれば今度は役所に戸籍名変更の届出を出し、さらに銀行や保険、免許証などあらゆる公式記録の名前を変更する手続きを行う必要があります。このように、改名はワンストップで完了する簡易なものではなく、法律と行政手続きをまたいだ一大イベントなのです。

まとめ:改名する手間があるのはしんどい

キラキラネームの代表例とも言える「光宙(ピカチュウ)」について、その実在や現在について見てきました。幸いにもこの名前は社会の教訓となり、名前をめぐる議論を巻き起こしましたが、当の本人やご家族にとっては決して楽な道のりではなかったはずです。

一度つけた名前を変えなければならない事態になるのは、本人にとっても親にとってもしんどいことです。改名には大きなエネルギーと勇気が要りますし、それまでの間に本人が受ける心の傷も無視できません。

昨今では法務省が「キラキラネームはつけないで!」とまで呼び掛け、戸籍法の改正によってそのような名前を最初から規制する動きが進んでいます。これは裏を返せば、それだけ奇抜な名前が子ども本人や社会に与える影響が問題視されているということです。

もちろん、唯一無二の個性的な名前自体を否定するものではありません。しかし、「親の自己満足になっていないか」「子どもが成長したとき本当に誇れる名前か」「社会で不利益を被らないか」という視点で慎重に考える姿勢が求められます。名前は親から子への最初の贈り物です。

そしてその贈り物は、子どもが一生背負っていく看板でもあります。改名の手間や周囲との軋轢といった余計な苦労を子どもに強いることのないよう、愛情とともに責任ある命名を心掛けたいものです。

参考文献

【1】 「光宙」(ピカチュウ)の名前を付けられた子供は実在するpk-mn.compk-mn.com
【3】 安倍総裁「キラキラネーム、いじめられる」j-cast.com
【5】 「光宙、七音、桜桜桜…」法務省が改正戸籍法で指針nikkan-gendai.comnikkan-gendai.com
【7】 キラキラネーム「王子様」に決別した18歳のその後toyokeizai.net
【11】 「光宙=ぴかちゅう」が法務省のお墨付を得てしまう?shinjukuacc.com
【15】 キラキラネームのピカチュウちゃんは実在してる!その末路は?canij.comcanij.com
【17】 名の変更許可 – 裁判所courts.go.jpcourts.go.jp
【19】 東洋経済オンライン – 赤池王子様さんの改名記事toyokeizai.net
【20】 東洋経済オンライン – 赤池王子様さんの改名記事toyokeizai.net
【26】 弁護士JPニュース – 「悪魔ちゃん」命名騒動から31年ben54.jpben54.jp
【29】 戸籍改名相談所 – 改名申立て件数と許可率kosekikaimei.netkosekikaimei.net

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本記事の監修者

森本 恭平のアバター 森本 恭平 運営者

東北大学法学研究科(公共法政策専攻)修了。幼少期は母子家庭で育った。東日本国際大学・福島復興創世研究所の准教授を経て、現在はデジタルマーケティング✖︎AIを専門にフリーランスとして複数の企業でアドバイザーを務めている。KADOKAWAドワンゴ情報工科学院、バンタンクリエイターアカデミーの講師。福島県総合計画審議委員会の審議員を歴任。

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